燃える様なオレンジの朝焼けが、南半球の水平線を染め上げる。
高度1万メートル上空を飛行する機内から
期待に胸踊らせながら眼下を見下ろす。
間もなくオーストラリア・ブリスベーン空港に到着、
憧れの地オーストラリアの大地に足を下ろす、その時がまじかに迫る。
K9クラブのルーツと言える、
Mr.小林とその愛犬リッキーが出会い育った国オーストラリア。
今回の旅のコンセプトは動物愛護と、
ワン子のしつけ、及び環境問題に付いて学び、
K9クラブのルーツを、各参加者それぞれの心の中で
解き明かす旅と言える。

今日の予定は観光、まずはローンパイン・コアラパークで、
コアラを抱いたり本場の牧羊犬のデモンストレーションを見学する。
ショーやペット用としてではなく、
牧羊犬として働く事を前提に、本来の性能重視で
ブリーディングされたフィールド系の純粋なボーダーコリー達、
計算された動きと逞しさは本場ならでは、見応え十分。
ハーディングをかまし、
凄まじい眼力で羊達を威嚇するその姿に戦慄を覚える。

午後はゴールドコーストでの市内観光やショッピングで楽しくすごす。
明日からは、いよいよ本来の研修がスタート。
K9クラブを代表する約20名のメンバー達、
皆さんそれぞれに期待に胸を膨らませ、といった感じでしょうか。

ゴールド・ コースト市役所訪問
市役所の議会室で、
動物管理部[部長]Mr.ギフ・アーウイン & Mrs.サリナから
ペット(主に犬と猫)に関する条例等に関するレクチャーを受ける。
ペット先進国、犬等を飼う割合は5件に一頭とさすがに多い。
それにまつわる様々な問題に対応するため
ゴールドコースト市の動物管理部は36人のスタッフで構成される。
ペットとの関わり方が文化として根付いているオーストラリア、
ゴールドコースト市では約80%もの犬やネコ達は
避妊と矯正の措置がとられている。
体にメスを入れず、生まれたまま、自然のままに育てたいなどと言う、
無知ゆえの幼稚な倫理観がペットとして飼われる犬やネコ達にとって、
終わり無く繰り返される大きなストレスや、病気の要因にも成りかねない
とても不自然な事だと言う事実が、よく認識されている証でもある。
しかしさすがにペット大国、頭数が多いと様々な問題も数が多い。
ペットに関する厳しい条例に対応できずペットとして飼えなくなた
数多くの犬猫、またパトロール等で捕獲される少数のペット達!
毎月施設(AWL)に引取られる犬猫の数はそれぞれ500頭にも及ぶ。
その一般的な問題の多くは、無駄吠えと管理不行き届きによる
ペットのうろつきや、ペット進入禁止区域等への立ち入り等だ。
これらの行為に対する罰金の額は、日本円にして最低7千500円から
人や動物をアタックした場合などは、最高罰金額37万円と高額になる。
もちろんそれに伴う民事裁判等で膨大な損害賠償、
及び慰謝料を別途に支払う事になるだろう。
これらの違反行為を、近所の人達が気軽に通報出来る
システムが確立されており、動物管理部のパトロールが現場に直行、
即違反チケットを切られると言う仕組みだ。
無駄吠えを近所の人に通報されて、罰金7千500円から!
これは、日本の常識からすればかなり厳しい。
それに、無駄吠えは罰金を払ったからといって直ぐに治まる訳も無い、
やはりペット先進国、基本的な犬に関するしつけ等は
必ずしておく事が前提のお国柄だと言える。
日本とは異なり、毎年行われる犬の登録と登録料の納付。
避妊・去勢済みの犬に対する登録料の50%offなど
様々な登録料の減額制度、
マイクロチップ装着を前提とした、行政の様々な技術的試行錯誤、
ペットの飼い主に対する、マナー教育の推進、
動物管理部の年間予算の内訳など、様々な興味深い話は尽きない。
しかし、どの事柄一つ取っても日本の現状とはあまりにも掛け離れた
スマートで合理的な行政のあり方にただ羨望の眼差しを向けるばかりだ。
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犬をオフリードで遊ばせる事が出来る公園を視察。
市役所を後にし、ゴールドコースト市が管理する公園を見学する。
この広大な敷地を有する公園は、
犬を自由にオフリードにして遊ばせる事が出来る。
作り付けの、簡易的なアジリティーの設備があるなど、
実に心にくい配慮が羨ましい。
市内には、この様な広大な規模の公園が100箇所ほど有ると言う。
公園内には、犬の糞の始末をするためのビニール袋が(左のPhoto)
備え付けられていて自由にそれを使う事が出来る、
わざわざ持ち帰る必要も無く、糞用のゴミ箱もちゃんと設置されている。
日本では考えられない環境に、驚きを隠せない。
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動物管理部パトロールカー
公園の近くで、パトロール中の動物管理部のパトロールカーに出会う。
36人体勢の管理部の中、19名程がパトロールの職務に従事する。
学校の校庭、ショッピングセンター、犬の立ち入りが規制されている公園、ビーチなど、犬の進入禁止のチェックや、
離し飼い等のチェックが主なパトロールの仕事となる。
左の写真、笑顔が素敵な女性パトロール官だ、
しかしさすがにオージー、逞しい体格に圧倒される。
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AWL(動物福祉施設)
次に訪れたのは、AWL(動物福祉施設)。
この組織は全て寄付により運営されている、
NPOの様な運営組織と考えれば分かりやすいだろう。
Mrs.ベリンダから色々興味深い説明を受ける。
この施設には、様々な理由で飼う事が出来なくなった犬や猫を
飼い主達が連れて来る、その犬猫の数一月ざっと各500頭にも及ぶ。
一例を上げると、躾を怠り無駄吠えの止まらない犬、
近状の通報で、飼い主は高額の罰金を支払う事になる。
罰金を支払ったからといって、無駄吠えは止まらない。
罰金は回を重ねるごとに高額になってゆく、
高額の罰金に耐えきれず犬を施設に連れて来るとゆうケース。
以前は通報3回で強制的に犬は施設に収容されたが、
現在は上記の通りに変更された。
怠慢な飼い主は結果的に以前同様、収容所の世話にならざるを終えない。
施設に収容された犬達には、何の罪も無い!全て飼い主の責任なのだ。
犬達は広いスペースの収容所の中で保護され、
犬を飼いたいと施設を訪れる実に大勢の人達の中から、
新しい飼い主に巡り会い引取られて行く。
これは、珍しいケースではなくオーストラリアでは
極一般的な日常の出来事なのだ、幼稚でミーハーで軽薄な
ペット大国と成りつつ有る日本とは違い、ペットに対する考え方
付き合い方が実に大人で成熟していると言えるだろう。
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クレグ・マレー特殊作業犬の実演を見学。
午後からは、先月来日したクレグ・マレーのトレーニングセンターで
特殊作業犬の実演を見学する。
麻薬捜査犬に始まり、爆発物捜査犬、汚染土壌捜査犬など
世界に先駆けてその育成に携わって来た、
この道のウルトラ・エキスパートなのだ。
今回は、世界的に深刻な被害をもたらし始めた獰猛な蟻
「ファイヤー・アント」の捜査犬のデモを
クレグの弟子、髭面のMr.クリスが私達に披露してくれた。
様々な蟻を故意に生息させた広大なトレーニンググランドの中、
小さな試験管に入れられたわずか5匹の「ファイヤー・アント」を隠す。
捜査犬は、その素晴しい嗅覚で見事にそれを探し当てる事が出来るのだ。
私達凡人の域を出ない犬好きにとっては、その驚愕に値する犬の能力を、
リアルに感動として認識する事が出来ない。
1分間に300回もの呼吸を繰り返し、
激しく集中しながら懸命に蟻を探す捜査犬、蟻を見つけた時のご褒美は、
何と!見つけた瞬間にMr.クリスが手に持つボールを地面に投げつける、
楽しいボール遊びの始まりが、嬉しいご褒美の始まりであった(笑)。
優秀な捜査犬も、やはり私達が愛すべき可愛い犬に変わりはないのだ。
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ペットホテルと、水圧セラピープールの施設を見学。
やはりペットホテルの環境・施設ともに素晴しい。
各犬の宿舎は、広く何と二部屋で構成されていて、
ゆったりと自由に動き回れるスペースが各部屋に用意されている。
様々な手作りフードにも対応出来るよう設備か完備された調理室などは
正に至れり尽くせりの感があり、
安心して長期間預けられる環境が整えられている。
水圧セラピープールの施設も見学。
水の抵抗を利用したルームランナーの様な設備に始まり
ジャグジー状の泡によるマッサージ効果を取り入れたプールなど、
効率よく、リハビリテーションに取り組める環境が整えられている。
人間用ではなく、犬専門施設だとゆう事をお忘れなく!
とにかく犬達にとって、素晴しい設備が整えられている。
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ゴールドコーストの住宅拝見。

本日の最後のプログラムは、ゴールドコーストのお宅拝見!
愛媛県は、松山在住の「松下さん」。
英語塾を経営する傍ら交換留学生の支援活動も手がけていらっしゃる、
その為にオーストラリアに素晴しい別宅をお持ちなのだ。
プールとテニスコート付きのこの邸宅、
日本の住宅事情とは掛け離れた素晴しいお宅に皆ため息が漏れる!
運河の岸辺に立つそのロケーションも最高だ。
本日のスケジュールはこれにて全て無事終了、お疲れ様でした。

 
 
 
 
 





   

バル・ボ ニーの訓練センターを視察。
訓練を「楽しむ」とゆう事は、どうゆう事なのであろうか?
バルのトレーニングセンターでの様子を見学し、
一番深く心に印象付けられた自分自身への問いかけだ。
その素晴しい環境のグランドや 多くの優秀で有能なスタッフ達の事は
事前に容易に想像する事は出来るし、実際正にその通りなのだ。
しかし訓練を「楽しむ」とゆう主観的なこの感情の具体的な実態は、
その現場で実際の空気をじかに肌で感じ、初めて理解する事ができる。
「楽しい」と感じるその感情は人それぞれに微妙に異なるだろう、また
様々な国によっても国民性と言う言葉が表す様に異なるかもしれない?
歴史や文化、風土により、その捉え方も感じ方も
違っていて当然と言いばそうなのだ。

様々なトレーニングや、デモンストレーションを
バルの説明を聞きながら見学する。
やはり、我々日本人が「楽しい」と思っているであろう「楽しさ」とは
異なる「楽しさ」を彼らはエンジョイしているのがよく分かる。
例えば、我々日本人が海外から見学に来られたお客様の前で
デモンストレーションを披露すると仮定した場合、
自分たちの日頃の、頑張った訓練の集大成を披露するために、
緊張と言う名のストレスと戦いながら思わず肩に力が入る。
見ている人達もその緊迫した空気に釣られて、
ついつい固唾を呑んでデモを見学、
見事全ての演技をやり終えたその時に、我々はその達成感と満足感に
浸りながらやっと肩の力を抜き「楽しさ」を噛み締める事だろう。

しかし私達が見学した彼らのデモンストレーションには
気合いの入った、張りつめた空気感など微塵も感じられない。
9匹の犬達で構成されたチームのメンバー達それぞれは、
演技が進行している今、その瞬間をリアルタイムで楽しみながら、
デモンストレーションそのものを、頑張らずエンジョイしているのだ。
それなりにミスも多くあるが、ハンドラー達の悪びれない
自然な笑顔が見学する私達の心を自然と暖かく和ませてくれる。
よい意味で、実に緊迫感の無い「ゆるい」穏やかな空気の中で
演技は展開され、そして終了する。
彼ら自身も「楽しい」し、それを見る私達も実に「楽しい」
思わず顔に微笑みが浮かぶ。

トレーニング自体の内容はK9クラブとなんら変わる所はない、
同じと言っても差し障りはない。
しかし、そのトレーニングにおいても良い意味で緊張感の無い
「ゆるい」穏やかな空気感は変わらない。
頑張らないで、力まないで、それぞれの今のレベルで
今のこのトレーニングの時間をマイペースで楽しんでいるのだ。
勤勉な日本人のストイックな一生懸命さでトライアルや赤組合格を
目指し頑張る姿とは異なる、ゆるく「楽しい」時が流れ、
穏やかな空気感と風景がそこには広がる。
みんな実にリラックスした、陽気で楽しげな笑顔が心に強く焼き付く。
頑張る事が好きな我々日本人には真似する事が出来ないかもしれない。
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バルの自宅でティータイム。
訓練センターから車で10分、バル・ボニー邸へ全員でおじゃまする。
スタッフも一緒に広いデッキテラスで楽しくティータイム、
憩いの一時を満喫する。
左の写真はバルとそのご主人、穏やかな素敵な笑顔が印象的だ。
ちなみに南半球のオーストラリア、今の季節は「冬」!
今年の冬は異様に気温が高い、これも地球温暖化の影響か?
みんな平気で半袖ですごす。
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シェパードのブリーダー訪問。
小林会長の愛犬リッキーと、石城トレーナーの愛犬キキ、
共にこの「カンテナー犬舎」でブリーディングされた
優秀なジャーマン・シェパードだ。
左の写真はオーナーであるMrs. ダイアン・バレンタイン。
クイーズランド州のジャーマン・シェパード協会の会長を務める。
広大な敷地のなか、清潔で行き届いた設備の犬舎は、
それだけでも十分信頼に足りる。
ちなみにゴールドコースト市街地では、600平米以下の宅地では
犬は1頭まで、600平米を超える宅地では2頭まで、
それ以上の頭数を飼う場合は市の許可が必要だ。
ゴールドコーストのプール付きの邸宅に住み、
「カンテナー犬舎」のジャーマンシェパードを飼い、
日曜日にはバル・ボニーの訓練センターでトレーニング。
トライアルを楽しむなどなど、
楽しげなかなわぬ夢は大いに膨らむが、現実は中々そうも行かない!
今日の出来事を振り返りつつ本日のスケジュールも滞り無く終了する。




 



   

ゴールド コースト最終日。
ゴールドコーストのサンシャインビーチ、
果てしなく続くかの様な広い砂浜で早朝の散歩の際に記念写真を一枚。
爽やかな朝の光が、メンバーの顔をオレンジに染める。
今日は一日丸々の自由時間、オプショナルツアーに、
又各自それぞれの遊びにと最後のゴールドコーストでの一日を楽しむ。
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最後の夜の晩餐会
K9クラブのルーツを巡る旅もいよいよ終わる。
小林会長始め、全てのメンバーで最後の晩餐会をにぎやかに楽しむ。
Mr.小林と愛犬「リッキー」により
オーストラリアのこの大地に植え付けられたルート(根)。
オーストラリア在住のおり、日本人として初めて
この地に犬のトレーニングスクールを開校、
その時のお弟子さんであったインストラクターの小倉さんも招待、
昔話に花が咲く。
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Mr.小林の信念と情熱により立ち上げられたK9クラブ。
オーストラリアより遥か遠く離れた日本の地・愛媛で、
小さな「ルート(根)」はその根を広げ、大きな「ルーツ」となり
枝を広げ、花を付け、実を結び始めたのだ。
今やMr.小林のオーストラリア時代の足跡は
遠い昔の伝説となりつつ有る。
しかしこのオーストラリアの大地に植え付けられた
小さな「ルート(根)」が枯れる事は無い、
Mr.小倉の活動により、また新たな展開を見せる事だろう。
これからも様々な方向に展開し広がり続けるK9クラブのルーツ。
Mr.小林と愛犬リッキーの足跡が、
伝説として時の幻の彼方に消え、忘れ去られるその前に、
しっかりと今、この目で心に強く焼き付けてきた、
ROOTS OF K9 CLUB.
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さよなら、オーストラリア・・・・・・ありがとう。